後立山 布引山(2683m)、鹿島槍南峰(2889m)、鹿島槍北峰(2842m)、アラ沢ノ頭 (2680m) 2010年9月26日

所要時間
 2:26 大谷原−−3:20 西俣出合−−4:51 高千穂平 5:12−−6:07 赤岩尾根分岐 6:10−−6:17 冷池山荘−−6:24 テント場 6:34−−7:12 布引山−−7:48 鹿島槍南峰 8:11−−8:33 鹿島槍北峰 8:50−−9:05 アラ沢ノ頭 9:18−−9:44 鹿島槍北峰 10:28−−10:49 鹿島槍南峰 11:13−−11:37 布引山−−12:01 テント場 12:21−−12:25 冷池山荘 12:30−−12:41 赤岩尾根分岐−−13:11 高千穂平−−14:02 西沢出合 14:25−−15:06 大谷原


概要
 台風通過翌日の好天を狙って大谷原から赤岩尾根、鹿島槍を経由してアラ沢ノ頭を日帰り往復。鹿島槍北峰までは一般登山道で問題無し。北峰からアラ沢ノ頭までは、岩屋さんが雪の付いた時期に登る鹿島槍東尾根の一部となるが、アラ沢ノ頭までだったら岩場は無くザイルは不要。稜線上は半分以上が草付きで歩きやすく、ハイマツがあっても腰ほどの高さで薄い踏跡があり、藪漕ぎというほどのレベルではない。登山口からの累積標高差が2100mを越えるので体力が必要だが、視界がいい日ならルートファインディング能力も大して必要とせず意外と簡単に登れる山。

 この日は冷え込んで霜が降りたが、紅葉はあまり進んでいなかった。展望は最高に近く、南ア深南部や能登半島まで見えた。

地図クリックで等倍表示


 9月も下旬に入ってようやく記録的酷暑が終わりを見せて秋の気配が近づいてきた。これまではあまりに暑くて3000m近いアルプス級の山でないと登る気が起きなかったが、これからはもう少し標高が低い藪山シーズン到来だ。とはいえ、まだ秋も初めでは下界は気温は高めだし虫もいるのでそこそこ標高が高い山の方が良い。未踏の2000m峰の中では穂高周辺や劒岳北方稜線、そして南アの離山に嫦娥岳などの岩の登場する山が多いが、西穂については今の実力でも歩けるだろうから混雑する週末を避ければ雪が降る前に行きたいところだ。

 その他の未踏2000m峰では北海道は別として越後三山の中ノ岳や長野中部の鉢盛山などがいいシーズンと言えようが、少し難易度が高そうな場所として鹿島槍東尾根のアラ沢ノ頭(2680m)がずっと頭に引っかかっていた。ここは後立山では私の残り1山で、知り合いの中ではKUMO氏しか登っていない山だ。かのDJF氏も未踏である。ただ、鹿島槍東尾根を登るクライマー連中は全てここの山頂を踏んでいるはずで、年間登山者数自体は100人くらいはいると思われる。その岩屋さんの記録を読むとアラ沢ノ頭から上部についてはほとんど記述が無く、北峰直下が傾斜が急で雪壁化しているくらいで特に難しい場所があるようには思えなかった。ただ、東尾根の雪が付いた岩場を登ってくる連中にとっては何でもない場所でも藪屋にとって簡単な場所とは限らず、それなりに気合が必要な場所であった。当然、私の実力で登れるのかは不明で、現場に行ってみないと分からない。

 昨年10月初めに補助ロープ2本を持って登りに行ったのだが、前日の降雪が10cmにも達し、山頂付近はガスの中に入って視界が皆無で尾根の先を見通すことができず、タダでさえリスクが高い東尾根を下るのはあまりに無謀であり鹿島槍南峰で諦めて下山したのだった。今回はそのリベンジである。今回の天候は台風が通過した翌日で、天気予報では小さいながらも大陸の高気圧に覆われて広い範囲で秋晴れの予想。台風の風も弱まって稜線で行動が制限される心配もない。もしかしたら初雪が降ったかもしれないが、昨年のような顕著な冬型になったわけではないのでみぞれ程度で、早朝に出発すれば山頂到着頃には消えているだろう。台風の雲は前日の日中には長野を通過し、お昼くらいには晴れていたことは槍ヶ岳のライブカメラで確認済みだ。

 本来なら土曜日に入山して初日は冷池山荘で幕営、翌日にアラ沢ノ頭を往復して下山だが、土曜日に台風が最接近したために日曜日日帰りと計画を変更した。日曜に幕営して月曜に山頂往復が適当なのだが、天気予報では早くも日曜午後から天気が下り坂で夕方から雨の予報だったので日帰りとしたのだった。この場合、1日で累積標高差2200m近くを登ることになるので体力温存が欠かせず、スピードは控えめにして休憩を長く取りながら行動することになろう。日曜の下山は遅くなることが予想され、月曜日は有給休暇を取ることにした。これで日曜日は心置きなく行動できる。

 土曜日は東京では強風が吹き荒れ冷たい雨が打ち付けていた。長野は東京より台風から遠いので影響は少ないと思うが、それでもあの標高だから稜線での強風はそれなりに違いない。長野辺りでは土曜午後が最接近のタイミングであり、たぶん私が登山口に到着するころには天気は回復しているだろう。午後3時近くに東京を出発し、登山口の大谷原到着は午後7時過ぎ。既に満天の星空だった。この天気だから今日の入山者は皆無だろうと思いきや、車が5,6台止まっていた。高速や一般道から見た夕方の後立山は稜線に少し雲がかかっている程度だったが、朝は荒れていたに違いないだろう。

 明日の行程はきついので、できるだけ早く歩き始めて下山で暗くならないようにしようと睡眠時間を6時間に設定、朝2時起床、2時半出発とした。鹿島槍山頂まで標高差約1800mだから休み無しで歩いても4時間半かかる計算で、体力温存で途中2回の休憩を入れれば5時間半くらいが妥当で、南峰到着は朝8時と予想された。これならまだ展望を楽しめる確率が高い。酒を飲みながらパッキングを済ませ横になった。

ゲート 西俣出合

 予定通りに起床、軽く飯を食って真っ暗闇の中出発。今はヘッドライトが不要な程度に明るくなるのは5時半近くだろうから、3時間ほどライトの出番が続く。ゲートを越えて約1時間の林道歩きが終わって堰堤手前に到着すると、堰堤は補強工事中で下流側に工事用の仮橋が建設されて、それを渡って対岸に到着。ここで水を1リットルほど汲んでおく。行動時間が長くなりそうなので手持ちの飲料1リットルと合わせて2リットルだ。これで不足しても冷池山荘で購入可能だが、今の気温ならそこまで消費することはなさそうだ。今の気温は10℃そこそこしかない。

赤岩尾根入口 プレートのある岩の直下
高千穂平(地形図上とは位置が違う) 水平線が焼けてきた

 ここからは本格的な登りが始まり、長袖シャツを脱いでTシャツ姿で歩きだす。夜中でも迷うような道ではなく、ライトで照らしながら淡々と高度を上げる。やはり夏場より気温がだいぶ下がっており、この登りでもほとんど汗をかかずにすんだ。ウェストポーチには夏場は大活躍した扇子が入っているが、今回は出番がない。虫もほとんどいないので快適だ。高度計で現在位置を確認しつつ高度を稼ぎ、本物の高千穂平直下を巻いたその先の肩で最初の休憩。東の地平線が赤く染まりだしたがまだライトが必要な明るさだ。ここまで来ると気温は1桁となり、冷蔵庫並みの4,5℃まで下がった。

夜明け前の鹿島槍 日の出。右の山は浅間山
朝日が当たりだした鹿島槍東尾根 北信の山々

 休憩を終えて歩きだし、少し高度を上げると尾根が痩せてきて木の高さ、密度が低くなって視界が開けてくると同時に周囲が明るくなってライトが不要になった。右手に見える鹿島槍は雲が絡むことも無く快晴、東尾根も良く見えている。どれがアラ沢ノ頭なのか不明だが、急激に高度を落とす前のピークのはずだ。雪も無さそうだし、今日は北峰から突入できそうだ。日差しも出てきてザックにくくりつけていた麦藁帽子を被った。

冷池山荘が見えてきた 赤岩尾根分岐標識が見える
梯子には霜が降りていた トラバース
もうすぐ県境稜線

 さらに高度を上げて階段が現れるようになると、木の階段に霜が降りていた。霜柱も見られ、山は秋の気配どころか冬の足音が近づいているようだ。しかし紅葉の進み具合は悪く、ナナカマドはほとんど色づいていなかった。最近になって急激に気温が下がっただけで、紅葉が進むのはこれからだろう。尾根がいっそう細くなって北斜面を巻くようになれば主稜線の赤岩尾根分岐の標識が目に入る。既に小屋を出発して活動を開始した登山者の行き交う姿が見えている。天気は快晴、間違いなく立山剣の展望も期待していいだろう。

赤岩尾根分岐 赤岩尾根分岐から見た爺ヶ岳方面
赤岩尾根分岐から見た立山(クリックで拡大)
赤岩尾根分岐から見た劒岳北方稜線(クリックで拡大)
赤岩尾根分岐から見た鹿島槍と東尾根

 トラバースルートが終わって主稜線に飛び出すと目の前にドドーンと立山、劒岳の稜線が登場。さすがにここまで来ると白馬岳などよりずっと近い。稜線を行き交う人はゴアを着て防寒しているが、私は今しがた赤岩尾根を登り終えたばかりなので一人だけTシャツ姿だ。幸い、稜線に出てもほとんど風は無く、長袖シャツを着る必要はなかった。

山荘へと下る。ここも霜で白い 冷池山荘

 鞍部へ下ると次々と登山者が上がってくる。冷池山荘を出発したばかりの登山者だろう。小屋に到着するとたくさんの人が出発準備中、昨日のあの天候の中でも結構な人数が入っていたようだ。もちろん、大谷原の車の数とは比較にならない人数で、縦走途中の人や柏原新道から往復の人もいるだろう。私も時間があったら後立山を延々と縦走したいところだが・・・。

テント場へと登る テント場
テント場から見た後立山南部と北アルプス(クリックで拡大)

 山荘を通過して一登りするとテント場に到着、まだ10張近いテントがあり、どれも霜が降りて真っ白だった。霜というより氷か雪と言った方がいいかもしれないくらいで、冷え込みの程度がうかがえた。まだ体の方が夏モードなので、この気温で快適に寝るにはそろそろ冬用シュラフが必要かもしれない。ここから山頂方向を見上げると、布引山の登りで何人もの登山者の姿が見えた。もちろん、今朝冷池山荘やテント場を出発した登山者だろう。

東尾根が近づいてくる
布引山の登り。点々と人が見える 遭難慰霊碑
爺ヶ岳を振り返る もうすぐ布引山
布引山直下から見た後立山南部〜劒岳(クリックで拡大)

 テント場から先はしばらくはなだらかな稜線を進み、やがて森林限界を突破。布引山への登りで傾斜が増す。ここから見上げる布引山は立派なピークのように見えるが、実際は肩のような場所だ。少しでも日陰になった石は霜が降りて白くなっているが、日が当たる場所は霜が解けて石が濡れている。ここは南向きの尾根なので、日中になれば日光がたっぷり当たって乾くことだろう。

布引山山頂 布引山から見た牛首山
布引山から見た鹿島槍

 軽装の登山者を数人追い越して布引山山頂へ。ここで休憩している登山者もいるが、こちらはまだ休むほどではないので写真だけ撮ってそのまま進む。ここまで来るともう鹿島槍山頂(南峰)は近く、山頂に立つ人の姿もはっきり見える。振り返れば槍穂はもちろん、水晶岳、薬師岳なども見えた。南アルプスも雲海の上に浮かんでいたが、奥日光方面は雲の高さが高く、志賀高原横手山は見えているが、それより奥の山は見えなかった。

鹿島槍南峰に向かう 牛首山拡大。なんか無雪期でも歩けそう
東尾根のここは崖かもしれない 南峰最後の登り

 肝心の東尾根は目の前に見えるが、北峰から落ちて最後に頭をもたげた後、傾斜が急に増すピークの北側は垂直の絶壁に見える。もしあれがアラ沢ノ頭だった場合、はたして登れるのだろうか? でも、東尾根を上がってきた岩屋さんは普通にあそこを下っているはずで、もしヤバイところならフィックスロープぐらいぶら下がっているだろう。とにかく現場に行って進むか撤退するかの判断をするしかない。牛首尾根に目を移すとなだらかな稜線が続き、無雪期でも簡単に登れそうに見えてしまう。実際、やってやれないことは無いと思う。風下側の稜線直下は草付きのように見えた。

鹿島槍ヶ岳南峰山頂 鹿島槍ヶ岳南峰から見た北峰
鹿島槍ヶ岳南峰から見た牛首山 鹿島槍ヶ岳南峰から見た富士山
鹿島槍ヶ岳南峰から見た冷池山荘 鹿島槍ヶ岳南峰から見た種池山荘
鹿島槍ヶ岳南峰から見た鹿島槍東尾根(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た北アルプス〜駒ヶ岳(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た北アルプス核心部(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た立山、劒岳(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た池ノ平山〜僧ヶ岳(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た黒部別山(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た北仙人尾根(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た後立山北部(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た東谷尾根
鹿島槍ヶ岳南峰から見た北信の山(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た志賀高原〜浅間山(クリックで拡大)
鹿島槍ヶ岳南峰から見た八ヶ岳
鹿島槍ヶ岳南峰から見た南アルプス(クリックで拡大)

 鹿島槍最後のジグザグの登りが終われば本日の最高峰、南峰山頂に到着だ。南側のみ僅かにガスが上がってくる以外は展望良好、先日の白馬岳では見えなかった日本海の海岸線もクッキリと見えていた。さらには能登半島までも。前回よりも空気の透明度が高い。白山も見えていた。山頂でしばし休憩して体力の回復を図ってから北峰に向かった。本当ならここで大半の荷物をデポして身軽に行きたいところだが、東尾根のことを考えるとそうもいかず、ザックをそのまま背負っていく。この格好で吊尾根を北峰に向かうのはキレット方面に縦走する人だと思うが、私の場合はこの格好で今日中に再び南峰を越えることになる。

北峰目指して下降開始 南峰を振り返る

 北峰への下りはなかなか急で、雪が付いていたらいやらしいところだが、既に霜も消えて難なく進むことができた。岩場に苦労気味の人も見られたが、ルート外の適当に下れそうな場所で追い越させてもらう。鞍部付近の南側にはまだ残雪があったが、これはもう消えることなくそのまま新雪に埋もれることになるだろう。

縦走路分岐から見た五龍岳方面 縦走路を外れて北峰へと向かう
鹿島槍ヶ岳北峰山頂 北峰から見た南峰
東尾根の踏跡。えらく明瞭 キレット小屋が真下に見える

 北峰に向けて高度を上げ、てっぺんに到着するより前にキレット方面への分岐がある。ザックが転がっているので先行者がいるようだ。さすがに一般登山者の目がある中で東尾根に足を踏み入れるのは気が引けるので無人になってから出発が良かろう。僅かに登って北峰山頂到着。西側は南峰に邪魔されるがそれ以外の方向はここも大展望を楽しめる。イヤらしいことに稜線東側からは雲が徐々に上がってきており、私がアラ沢ノ頭に到着する前に尾根がガスで覆われて視界が無くなるか微妙な情勢だ。まあ、ここまで来たのならもしガスってもアタックするけどね。

 男性が降りて山頂が無人になってからこちらも動き出す。この天候なので防寒着は不要、足元はハイマツに備えてロングスパッツを装着、もちろん今日は半ズボンではなく長ズボンだ。アタックザックには水と15m×2本のロープ、それにハイマツが濡れている場合を想定してゴアも入れた。東尾根入口には低い標柱が立っており「踏跡注意」との文字が。ここは東尾根入口で登山道ではないとか書いておけばいいような気がするが・・・。一応、地面に置いてある石には×印が書かれているので、普通はこれで意味が分かるだろうけど。踏跡は非常に明瞭で、もしこのレベルの濃さが続いていればハイマツとの格闘の心配は無さそうだ。

東尾根に突入 北峰を振り返る。ハイマツ中に踏跡あり
2810m肩の西側を巻いた 2810m肩の下りから振り返る

 南にまっすぐ下り、ケルンがある肩の部分で尾根は直角に左に曲がると同時に踏跡はめっきり薄くなった。今までの踏跡はこのケルンで展望を楽しむ人がつけたものだったようだ。いきなりハイマツ帯から始まるが、まだまだ背丈は低いし密度も濃くなく、薄い踏跡があるので藪漕ぎのレベルからは程遠く歩きやすい。少し傾斜があるので季節風に対して風下側でもあるし、雪が付くと雪壁状態になるかもしれない。2810m肩はてっぺんが露岩で下りの様子が心配だったので西から南側をトラバースした。帰りは稜線上に付いた踏跡を辿ったが危険箇所は無く、巻く必要はなかった。2810m肩の下りも急で立ち木は無く、雪が付くと恐怖感を感じるかもしれない。もちろん、今の時期なら気持ちの良い草付きで安心して歩ける。

2740m?峰。地形図では読み取れないピーク 2740m?峰を越えて南側から見る
2710m肩へと緩やかに下る 主に西側は草付き
東側は崖 2710m肩最高点は近い

 2810m肩からしばらくは草付きの中に薄い踏跡が続き、傾斜が緩むと2重山稜となる所があり、ここも草付きで問題なく進める。稜線上に低いハイマツが生える場所もあるが、稜線のどちらか直下は草付きでハイマツを迂回できるような場所が多く、主に稜線西側の方が歩きやすい場所が多かった。地形図では読み取れないが2710m付近が小ピークとなっており、ここに向けて緩やかに登っていると下からガスが登ってきてその先の稜線を覆い隠してしまった。GPSで残距離を見るとまだ100m以上あるので目の前のピークは目的地ではなく、その先の低い位置に見えているピークだろう。ガスって良く見えないが、北側が絶壁に見えたピークなのだろうか?

2710m肩最高点付近はハイマツ ハイマツ中の踏跡

 2710m肩はてっぺん付近から下りにかけてが踏跡が薄く、膝から腰くらいの高さのハイマツの中に突っ込んでいく。左側(東斜面)はガレて迂回不可能、右側はハイマツが続いていたので稜線上を進んだ。下りにかかるとガスりながらも50m位は視界があり、鞍部から登りの尾根の様子が見えた。東側が崖になっているが西側はなだらかな斜面で、稜線直上より少し西側に寄って歩けば問題無さそうだ。残距離は数10mまで接近し、このピークが山頂に間違いない。

鞍部から登り返す 稜線西側は緩斜面
アラ沢ノ頭山頂、背景は北峰なのだが・・・ アラ沢ノ頭にてGPSの表示。残距離は9.28m

 鞍部から先はハイマツから開放されて石と草付きの歩きやすい斜面となり、一登りでアラ沢ノ頭山頂に到着した。山頂は大半が石に覆われ植物は少なく、僅かにハイマツが絡んでいた。山頂付近には人工物は見当たらず、特に顕著なピークというわけでもないし地形図にもエアリアマップにも名前が登場しないピークなので山頂標識を設置する人はいないのであろう。岩屋さんにはタダの通過点でしかない。なにせ私でも危険を感じる場所が無いまま山頂まで下ってきてしまったのだから。周囲はガスって展望は無いのでこの先の東尾根の様子が全く見えないのは残念だった。後立山最後の2000m峰で展望を楽しめないのは残念だが、思ったよりも簡単に山頂に立てることが分かったのは大きな収穫だった。もちろん、アラ沢ノ頭より下部は岩屋さんの世界だろう。

帰りは2810m肩へと登る 下りで2810m肩を巻いた斜面
東尾根入口にあった遭難プレート 北峰再び
北峰から見た五龍岳。東から雲海が押し寄せていた
北峰から見た清水岳から名剣山(クリックで拡大)

 少々の休憩後、北峰へと登り返す。2710m肩までがハイマツ中の薄い踏跡を登ることになるので逆目のハイマツが鬱陶しいが、それさえ通過すればあとはルンルン気分の稜線歩きだ。ただ、ここへきての登りはさすがに体にこたえて息が上がる。最後に急な尾根を付き上げてケルンの立つ北峰の南端肩に到着、山頂は無人で一般登山者を驚かせることはなかった。ただ、私がアラ沢ノ頭を往復中は無人の山頂にザックがデポされており、登ってきた人は持ち主がどこに行ったのか不思議に思ったかもしれない。それとも雉撃ちと思ったかな?

北峰から見た南峰。まだ人が多い 北峰直下の縦走路分岐
鞍部の残雪 南峰山頂
南峰を下る。稜線東からガスが上がってくる 布引山の登り
平坦なルートに入る 草は多少紅葉していた

 本日の目的は達成し、あとは下山のみなので北峰山頂でのんびり休憩。2名の登山者がやってきて、同様に休憩して戻っていくのを見計らってこちらも南峰へと向かう。標高差約100mの登りでもなかなか疲れるが、何だかんだで軽装の2名に追いついてしまう。山頂では再び大休止。県境の東側は一面の雲海に覆われてしまったが、雲が稜線を越えることは無く黒部方面は快晴のままだ。でも天気予報ではこれから下り坂で夕方には雨なんだよなぁ。ま、下りだったら雨になってもいいか。山頂では北海道からフェリーでやってきて10月いっぱいまで本州の200名山めぐりをしているという男性2名がいたが、定年退職して今は「毎日が日曜日」らしく羨ましい限りだ。私にそんなことが訪れるのはまだ20年も先だ。その頃の年金がどうなっているか大いに不安で、「毎日が日曜日」とはならないかも・・・・。他には名古屋から来たという若い男性もいた。

テント場で休憩 赤岩尾根分岐。人物は名古屋人
トラバース区間 ニセ高千穂平

 腹が減ったのでテント場で小休止して腹ごしらえ。既にテント場は空っぽだった。山頂で一緒だった名古屋人は冷池山荘で休憩中。少し話をして同時に出発。あちらは柏原新道から登ってきたとのことで、このまま柏原新道登山口まで戻るとのこと。いや〜、このルートで日帰りとはご苦労様。赤岩尾根の方が傾斜はきついが楽だと思うが。赤岩尾根分岐に登り返して体が温まり、Tシャツに変身して以降はグングン下っていく。まだ登ってくる人がそれなりにいて、下っている人はさすがに少ない。最初はガスの中だったが標高が落ちると雲の下に出て、もっと高度を下げると平野部にはまだ青空が見えていることがわかり、まだしばし雨は来ないようで一安心。

本当の高千穂平入口 まだ大谷原は遥か下
ここにも遭難プレート よく整備された道が続く
西俣出合の仮橋 西俣出合の休憩所
東尾根入口。路肩の標識が目印 東尾根入口は木にいくつもの目印が下がっている
林道分岐にこれがあるが踏跡不明瞭 ゲート
稜線は完全に雲の中 駐車場

 西俣出合の休憩所前でシートを敷いてひっくり返って休憩。登りで1時間近くかかったが、傾斜が緩いので下りでもそれなりに時間がかかりそうだ。でも傾斜が無い分、足への負担は軽く、タダタダ足を動かしていればいい。起き上がって最後の歩き。無人の林道を音楽を聴きながら黙々と歩き、一ノ沢ノ頭から下ったときに林道に出た場所を通過、尾根末端を巻く林道が合流すればゴールは近く、すぐにゲートが登場、駐車場に到着した。 

 

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